モンテッソーリ棚とは? 基本概念から選び方・使い方・教育効果までを知育家具メーカーが解説

近年、家庭にモンテッソーリ教育のエッセンスを取り入れる動きが広がっています。その中でも注目されるのがモンテッソーリ教育の収納棚です。これは、一見シンプルなオープンタイプの収納棚ですが、子どもが自分でおもちゃや教材を出し入れし、片付けることを促してくれるの効果があります。

本記事では、国際モンテッソーリ教師監修の知育家具メーカーであるMINORINOならではの視点で、モンテッソーリ棚の基本概念から選び方・使い方、そしてそれが子どもの発達にもたらす教育的効果までを詳しく解説します。最後に、これらの知見を取り入れたMINORINOのSHELF製品の強みについてもご紹介しますので、ぜひご一読ください。

モンテッソーリ棚の基本概念

まず、モンテッソーリ教育における環境と収納の基本的な考え方を確認しましょう。

モンテッソーリ教育では「秩序だった環境」が子どもの発達を支えるとされています。モンテッソーリ園の教室を思い浮かべると、教具やおもちゃが整然と並び、子どもたちが使った後は決められた場所にきちんと戻している姿が特徴的です。

「モンテッソーリは秩序の教育である」と言われるほどで、全ての活動には所定の位置があり、子どもは一度に一つの活動に集中し、終わったら元の場所に戻すよう指導されます​。このように、環境の整理整頓と秩序だったルールがあることで、子ども自身が安心して活動できるのです。

モンテッソーリ教育の創始者マリア・モンテッソーリは「子どもを援助するためには、自由に発達することのできる環境を用意しなければならない」と述べています​。いわゆる「準備された環境(Prepared Environment)」と呼ばれるものです。

子どもが自分で動き、選び、学べるように整えられた環境は、まさに「環境が子どもの成長を支える」ことを体現しています。家具や用具の配置、高さ、大きさまで子どもの視点で考慮された空間では、子どもは大人に頼らずとも必要な物を見つけ出し、また使い終えたものを戻す場所を理解できます​。

実際、子どもの手が届く高さで全ての物に定位置が決まっていると、子どもは自分で必要な物を取り出し、使い終わった後に元に戻すことができます。そしてそのように秩序立った環境では刺激が過剰にならないため、子どもは目の前の活動により集中できるようになるのです

さらに、幼い子どもには秩序を求める「秩序の敏感期」があり、身の回りがいつも決まった状況であることに安心感を抱きます​環境が整っていると、子どもは自分の中に秩序だった思考パターンや行動習慣を築きやすくなるのです。実際に、モンテッソーリ教育の環境は隅々まで整然としており、物が常に所定の場所に置かれていますが、これは単なる見た目の問題ではなく子どもの心の安定と発達に直結する重要な要素だとされています​

書籍「Montessori: The Science Behind the Genius(Angeline Stoll Lillard, 2017)」の中でも、研究者たちが「モンテッソーリの環境は徹底して秩序立っており、全ての物が所定の位置にある。秩序だった環境で育つことは、子どもの学業面・非認知面双方の発達に良い影響を及ぼす」ことを指摘しています​。

要するに、モンテッソーリ棚とは単なる収納家具ではなく、子どもの自主性と集中力を引き出すための「教育環境の一部」なのです。整った環境は子どもにとっての安心基地となり、自発的な活動を後押しします。

シンプルでありながらとても奥の深い家具です。

モンテッソーリ棚の選び方

それでは、家庭にモンテッソーリ棚を取り入れる際、どのような棚を選ぶとよいのでしょうか。子どもの発達段階に適した収納家具を選ぶポイントを、サイズ・構造・素材・安全性といった観点から整理します。

子どもの目線に合ったサイズ

モンテッソーリ棚の高さは子どもの身長に合わせて低く作られていることが重要です。一般的に子どもが自分で棚の上まで手が届き、全ての物を自分で取り出せる高さ(約30~60cm程度)が望ましいです。低い棚であれば、まだ小さい幼児でも自分でおもちゃを選び、片付けることが可能になります。このくらいの高さであれば、プレイテーブルとしても併用できますよ。

オープン構造

モンテッソーリ棚の正面は扉のないオープン仕様で、棚板に置かれた物が一目で見渡せるデザインが基本です。扉や蓋が付いていないことで、子どもは中身を常に確認でき、自ら進んで手に取ろうという意欲をかき立てられます​。さらに、オープン棚であれば扉の開閉の煩わしさがなく安全で、物の出し入れもスムーズです。いかに、子どもにとってのハードルをなくせるかが重要になります。

素材とデザイン

自然素材で丈夫に作られていることも重要です。木製などナチュラルで温かみのある素材はモンテッソーリの理念にも合致し、部屋の中で落ち着いた存在感を放ちます​。実際、モンテッソーリの環境ではプラスチックよりも木や金属など本物の素材が好まれます。また、角が尖っていない丸みのあるデザインだと安全性が高まります​。子どもは思わぬ動きをすることがあるため、角が丸く面取りされ、安定感のある構造の棚を選びましょう。

安全性と安定性

棚自体の安定感も見逃せません。軽量すぎて簡単に動いたり倒れたりしないよう、適度な重さと安定したつくりであることが望ましいです。特に幼児は棚につかまり立ちしたり、登ろうとしたりする可能性もあり、実際に重大な事故につながってしまった事例もあります。そのため、しっかりとした作りで倒れにくいものを選びます​。また仕上げ材に有害な塗料を使っていないか、子どもが舐めても安全な塗装か、といった点も確認しましょう。子どもが安全に使えない家具では、常に親が付きっきりでなくてはならず、それでは自立心を育むことはできません。教育的にもとても大切な要素です。

以上をまとめると、子どもにとって使いやすく安全な棚こそがモンテッソーリ棚の条件です。具体的には「子どもの手が届く低い開放型の棚」「木製で丈夫かつ角が丸い安全設計」「安定性が高く子どもが自分で扱える構造」といった特徴を備えたものが理想です​。こうしたポイントを押さえた棚を用意することで、家庭でもモンテッソーリの環境を整える第一歩となります。

モンテッソーリ棚の使い方

適切な棚を用意したら、次はその使い方を工夫しましょう。モンテッソーリ棚は置き方次第でその効果が最大限に発揮されます。子どもが主体的に整理整頓できるような仕組みづくりと、「見える収納」と「隠す収納」の使い分けについてポイントを押さえます。

おもちゃや教具の配置方法

基本的には、シンプルで見通しの良い陳列を意識してみてください。棚には種類ごとに決まった場所を作り、カテゴリーごとにまとめて配置します。例えば「パズルは左上の棚」「積み木は右下の棚」というように定位置を決めておけば、子どもはどこから取ってどこに戻せばよいかが一目で分かります。また各棚に余裕を持たせ、並べるおもちゃの数を絞ることも大切です。一度に与えるおもちゃの種類が多すぎると子どもは圧倒されてしまいがちですが、モンテッソーリでは厳選した少数の活動を並べて選ばせることで集中力を養います​。家庭でも「少ないほうが豊かに遊ぶ」ことを念頭に、出すおもちゃの数をコントロールしましょう。

子どもが主体的に片付けできる工夫

子ども自身が「お片付け」を習慣化できるよう、収納の仕組み自体を工夫することも大切です。ただ「片付けなさい」と言うのではなく、子どもにとって片付けやすい環境を準備します。具体的には、おもちゃをカテゴリー別にトレイやカゴに入れて収納すると良いでしょう​。パズルやブロック、小さなフィギュアなど細かい物はトレイごと取り出して遊べるようにし、終わったらそのトレイを棚に戻すだけで片付くようにします。これによって、散らかった部品を一つひとつ拾い集める手間が減り、子どもも片付けに取り組みやすくなります。

おもちゃのローテーション

モンテッソーリ棚では基本的に子どもが見て選べるようにオープンタイプのおもちゃ棚におもちゃを配置します。しかし、全てを出しておくと物が増えすぎて乱雑になりがちなため、子どもが今集中して遊べる量だけを棚に並べ、それ以外の玩具はクローゼットなど別の場所にしまっておきます​。そして子どもが飽きてきた頃に入れ替え、子どもにとっての新鮮さを保つのです​。この方法なら常に棚上は整頓され、かつ子どもにとっても適度な新鮮さが維持できます。

このように環境を整えることで、片付けも子どもの「おしごと」になります。毎日の遊びの中で自然と「使ったら戻す」が身につけば、お片付けはもはや親が強制するものではなく、子どもの習慣となっていくでしょう。​

モンテッソーリ棚の教育的効果

では、モンテッソーリ棚を取り入れた収納環境が、具体的に子どものどのような力を育むのでしょうか。ここでは自主性秩序感といった非認知的能力から、思考力・問題解決能力、さらには日々の片付け習慣を通じた自己肯定感・責任感の醸成まで、いくつかの観点に分けてその教育的効果を見てみます。

自主性(自立心)の育成

モンテッソーリ棚最大の効果の一つが、子どもの自主性を育てることです。子どもが自分で「これで遊びたい」と選び、自分の力で取り出して活動し、終われば自分で片付ける——この一連の流れそのものが自主的な行動です。環境が整っていれば大人の手を借りずとも子どもは行動できるため、「自分でできた!」という成功体験が積み重なります。この体験は子どもの自己効力感や自信につながり、さらなる意欲を生み出します。子どもに選択と決断の機会を与え、自主性と意思決定能力を育むのです。

秩序感の養成

前述したように、秩序だった環境で育った子どもは内面にも秩序だった思考や行動パターンが育ちやすいと言われます。決まった場所に物を戻す習慣は、幼児期の子どもにとっては秩序やルールを学ぶ初めの一歩です。それを毎日繰り返すことで、「物事には決まりや順序がある」という感覚が身についていきます。この秩序感は、のちの学習態度や社会生活の基礎にもなります。無秩序な環境下では子どもも気持ちが落ち着かず、秩序立った行動を身につけにくくなるともいわれます。モンテッソーリ棚を通じて「決まった場所に戻す」ことを習慣化することは、子どもの秩序感覚を育むうえで非常に有効なのです。

思考力・問題解決能力への貢献

一見、棚の片付けと論理的思考は無関係のように思えますが、実は密接な関係があります。まず、整理整頓された空間は子どもの集中力を高め、じっくり物事に取り組む姿勢を育てます。必要なものが整然と配置された環境では目の前の課題に没頭しやすくなります。例えば、パズルを解いたり、ワークに取り組んだり、といったことが挙げられますね。その結果、問題解決に向けた試行錯誤を繰り返し、思考力が鍛えられていきます。また、自分で片付ける際に「次にこのパーツはどこにしまうべきか?」と考えるプロセス自体が、分類や記憶のトレーニングになっています。実際の研究でも、家庭で年齢に見合ったお手伝いをしている子どもは問題解決スキルや実行機能が高い可能性が示されています(Executive functions and household chores: Does engagement in chores predict children’s cognition?” by Deanna L. Tepper et al. Australian Occupational Therapy Journal )。モンテッソーリ棚の環境下で日々「考えながら片付ける」経験を積むことは、知らず知らずのうちに子どもの認知的なスキル向上につながっているのです。

自己肯定感・責任感への効果

自分の空間を自分で管理する経験は、子どもの自己肯定感や責任感も育てます。モンテッソーリ棚でお片付けまで子どもに任せていると、子どもは「自分の物は自分で管理できる」という責任感を持ち始めます。決められた仕事をやり遂げることで得られる達成感は、子どもの自己肯定感を高めます。日々の小さな片付けであっても、子どもに任せて見守ることで、「できた!」というポジティブな感情と「自分の空間を自分で守る」という責任意識が芽生えていくでしょう。

以上のように、モンテッソーリ棚を核とした整理整頓された環境には、多角的な教育効果があります。それは単に部屋がきれいになる以上の意味を持ち、子どもの人格形成や知的発達に良い影響を与えてくれるのです。

MINORINOのSHELFに見るモンテッソーリ棚の理想形

ここまで紹介したモンテッソーリ棚の理念や効果は、実際の製品にも活かされています。例えばMINORINOのSHELFは、国際モンテッソーリ教師の監修のもとで開発されたモンテッソーリ思想に基づく収納棚であり、その設計には上述のポイントが随所に反映されています。

子ども目線のデザイン

MINORINOのSHELFは高さ50cm程度と、幼児が自分で棚の上のものまで手を届かせることができます。プレイテーブルとしても、ブロック遊びをするも良し、おままごとをするも良し、シンプルなデザインが子どもの遊びの幅を無限に広げます。棚幅も子どもが一人で管理するのにちょうどよいサイズで、リビングに置いても圧迫感がありません。これにより「自分のテリトリー」として子どもが扱いやすい領域が生まれ、家庭内でも子どもの自主性を育む空間づくりが可能になります​。

オープンタイプ+引き出しのハイブリッド

モンテッソーリ教育の定番であるオープン棚をベースにしつつ、MINORINOのSHELFには浅い引き出しが組み込まれています​。棚部分にはおもちゃを見せる収納で並べ、引き出し部分には小さなパーツ類や文房具・紙類などをしまっておくことができます​。引き出しは3つの浅型サイズで小分けできるようになっており、カテゴリーごとに整理しやすくすることで子どもがお片付けしやすい工夫となっています​。子どもも「どの引き出しに何をしまうか」を自然と考えながら片付ける習慣が身につきやすいでしょう​

安全で質の高い素材

MINORINOの家具はシンプルモダンなデザインでインテリアになじむよう工夫されていますが、その一方で子どもの使用に耐える頑丈さと安全性を兼ね備えています​。角は丸く処理され、棚自体の安定感も高く設計されています。

環境づくりの総合提案

MINORINOはSHELF以外にもDESKやCHAIR、CHESTを展開しており、リビングに子どもの創作・学習スペースをトータルに設計できるようになっています。黒を基調とした落ち着いたカラーリングとシンプルなデザインは大人の空間にもマッチし、リビングの一角に子どものコーナーを設けても統一感が保てます​。これにより、家族が集う場に子どもの自主性を育むテリトリーを違和感なく融合させることができるのです。

MINORINOのSHELF SET

まとめ

モンテッソーリ棚は、単なる収納家具ではなく子どもの発達を支える重要な教育ツールです。整理整頓された環境が子どもの自主性・秩序感・集中力・創造力に与える良い影響は海外の研究や専門家の見解でも裏付けられています。​

家庭でその効果を取り入れるには、子ども目線で工夫された棚を選び、適切な使い方で環境を整えることがポイントです。ぜひモンテッソーリ棚を活用して、お子さんの「自分でできる!」を育む温かい家庭環境づくりに挑戦してみてくださいね。