リビングに置くキッズデスク&チェアの選び方――インテリアに溶け込み、子どもの自立を育む家具とは

この記事のポイント
- 1. リビングに子ども用チェアを置くなら、キャスター付きの学習机ライクなものは避けたい。インテリアに馴染むデザインのキッズチェアを選ぶことで、空間に統一感が生まれ、子どもも心地よく過ごせます。
- 2. モンテッソーリ教育の観点では、子どもが自分で動かせる軽量でアームレスのチェアが理想。自立を促し、子ども自身が着座や配置を自由にコントロールできる環境が大切です。
- 3. まずは部屋全体のカラーや素材感を見渡し、浮かないチェアを選ぶこと。デスクとの相性や床材との調和を意識すれば、リビングの一角が自然な学びのコーナーになります。
リビングに置くキッズチェアは「インテリアの一部」として選ぶ
リビングの一角にキッズデスクを置いて、子どもの遊びや学びのスペースをつくるご家庭が増えています。ここで意外と悩むのがチェア選びです。一般的な学習机セットに付属するようなキャスター付きのチェアは機能的に見えますが、リビング空間ではどこか浮いてしまいがち。オーストラリアのインテリアデザイナー、クリス・キャロル氏も「リビングのようなマルチパーパスな空間では、いかにもオフィスとわかる家具は避けるべき*」と述べており、従来型のオフィスデスクやオフィスチェアは置かず、代わりに空間に違和感なく溶け込むコンソールテーブルや快適なダイニングチェアを活用することを勧めています。そして、多くのインテリアデザイナーや家具デザイナーも同様の考え方を持っています。
(*source: https://www.tlcinteriors.com.au/howto-decorate/multipurpose-room-ideas/)
子ども用であっても同じことが言えるでしょう。リビングは家族が集う場所であり、インテリア全体のトーンが大切にされる空間。チェアだけが無骨で事務的な印象を与えてしまうと、せっかくの心地よさが損なわれてしまいます。デスクと同系色のチェアを合わせたり、木製フレームのチェアでナチュラルな温かみを持たせたりすることで、チェアだけ浮いて見えることなく空間に統一感が生まれるのです。ワークスペースをリビングの延長だと考え、部屋全体のカラーストーリーや素材感を統一することが重要でしょう。
こうすることで「リビングの隅に無理やり学習コーナーがある」ようなちぐはぐ感を避け、あくまでインテリアの一部として溶け込むスペースになります。子どもにとっても、美しく整った環境で過ごす時間は心地よく、自然と机に向かう習慣につながるかもしれませんね。
リビングで学習机チェアを避けたい理由
キャスター付きチェアを避けるべき理由は見た目だけではありません。床や動線への悪影響も指摘できます。硬い車輪でフローリング上を動くと、微細な砂埃が挟まって床面をこすり傷つける恐れがあるのです。実際、キャスター付きのチェアを使う場合、保護マットやカーペットを敷き床を保護することが推奨されます。つまり、床を守るために一定のインテリア上の制限を受けてしまうという意味でもあるのです。
さらに、キャスター付きの学習机とチェアは、一般的には学童期以降の子ども向けに作られています。つまり、幼児期の子どもにはサイズが大きすぎるのです。こちらのブログ「キッズデスクは長く使える? 幼児期の「今」に最適化するという選択肢」でも、幼児期に最適なキッズデスク・チェアの選び方を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
学習机は、子どもが小学校中~高学年ごろに集中して学習に取り組めるようなったころ、子ども部屋で使用することが最も使用効果を高めることができるのではないかと思います。子どもの発達段階と使用目的を考慮して、そのタイミングごとにキッズデスクか学習机か、適切なアイテムを選びたいですね。
色と素材で空間に馴染ませる
チェアだけが浮かないよう、色と素材を周辺家具と揃えるのがコツ。デスクと同系色の座面で合わせるなど、カラーストーリーを統一すると一体感が生まれます。木質の見える脚やフレームは、フローリングや他の木製家具と相性が良く、空間に温かみと奥行きを添えてくれるでしょう。
最もベーシックな4本脚は、安定感があり視線もすっきりします。脚間から床がのぞく分、圧迫感が出にくいのも利点。コンパクトなシルエットのほうがリビングの回遊を妨げません。子どもの手で少し持ち上げられる軽さなら、片づけや席替えもスムーズに進むはずです。
キッズチェアに長時間座る機能は必須ではない
そもそも、子どもの場合、超長時間座りっぱなしであるケースはあまりありません。保育の現場でも、集中力を高めるために、動きのあるアクティブな活動とチェアに座った静かな活動を交互に取り入れるなど、座りっぱなしの環境はあまり見られないのです。リビングに置くという観点では、ワークチェアライクな学習机チェアを選ぶ必要はないと考えます。
モンテッソーリ教育の視点――自由な動きと自立を支えるチェア
ここからは教育的な観点でも、キッズチェア選びを考えてみましょう。モンテッソーリ教育の中核的な考え方は、子どもの自立と自由な動きを支える「準備された環境」を整えることです。モンテッソーリの教室では、子どもサイズの家具が「自立を助けるために不可欠」とされ、子どもが大人の助けなく自分の環境に自由にアクセスして使えるようにします。
環境と備品は子どもの自律性を促すように配置され、たとえばテーブルやチェアは子どもが自分で移動できるほど軽量でありながら、安全なレベルの強度を備えています。これは、子どものニーズに対応するように環境を設計してあげれば、子どもは大人の介助なしに座ったり動いたりできるというモンテッソーリの考えを反映しているのです。適切な家具の選択は自由な動きと選択を促します。
軽量で扱いやすいチェアの意義
モンテッソーリ教育に沿ったデザインにおいては、幼児向けのチェアは子ども自身が使い、独力で位置を変えられることを重視しています。頑丈で安定していつつも、軽量で持ち運びしやすい形状であれば、子どもが自分で持ち運ぶことができます。これにより、1~2歳の幼児でも自分でデスクやテーブルから離着席できるようになります。
優れたモンテッソーリチェアとは、子どもがそれを自分の道具として責任をもって所有でき、チェアを引き出し、座り、立ち上がり、ときには運搬や配置換えをして自分の空間を整えられるチェアと言えるでしょう。
アームレスデザインが自立を促す理由
自律的な活動を始めた幼児には、アームレスデザインがおすすめです。アームのないチェアは物理的障壁が少なく、子どもが独力で座席への出入りをしやすくなります。言い換えれば、開放的な側面を持つチェアは、子どもが側方から近づいたり、チェアから離れたり、頻繁に動きがちな幼児にとって重要なのです。
この自由はまた、子どもが自分の座位を自ら調整できることを意味します。モンテッソーリの教室では、子どもの動きを不当に制限するような使用のチェアは選ばれません。実際、子どもが自分でチェアを運んだり押したり配置換えできるよう、教室にそのためのチェアを用意しているのです。
チェアを運ぶという行為自体が、モンテッソーリの日常生活練習として、学ぶ活動であると考えられます。アームレスチェアは、一般に軽量で掴みやすいため、これらの活動を容易にするでしょう。モンテッソーリの活動では、トレイや引き出しを持ってデスクに運ぶという動作が行われます。その観点でも、両手がふさがった状態でいかに座りやすいかというのは、子どものやる気を阻害しないためにも重要です。
安定感と安全性も忘れずに
あまりに軽いチェアは転倒リスクもあるため安定感のあるものが必要でしょう。子どもの自由な活動を許容するためには、安全性への配慮もかかせません。
例外的に、まだ自立的にチェアに座ることのできないベビー期(独立着座を始める前)は、体のにはアームレストのあるチェアが安心です。成長段階に応じて、適切なチェアを選んであげることが大切です。
また、キッズチェアと言えば、ハイチェアでも良いのでは、という声も聞こえますが、ハイチェアは、子どもの自立の観点でもあまり理想的な手段ではありません。やはり1〜2歳の子どもでは自分で座ることも難しいこともあり、体格がしっかりきてきた4〜5歳の子供でも、座りにくさからは心理的ハードルにつながってしまうでしょう。リビングでの使用を考えるなら、子どもが自分で扱える高さと形状のチェアを選ぶことをおすすめします。
キッズチェアに関するQ&A
リビングにキッズチェアを置く際、最も重視すべきポイントは何ですか?
インテリアとの調和と子どもの自立を両立させることです。キャスター付きの学習机セットではなく、部屋の色調や素材感に合う脚付きチェアを選ぶと、空間に統一感が生まれます。
キャスター付きのチェアを避けたほうが良い理由は?
視覚的にオフィス感が出て浮いてしまうこと、床を傷つけるリスクがあること、意図せず動いて動線を妨げる可能性があることが挙げられます。脚付きチェアなら定位置に留まり安心です。
子どもに長時間座れる高機能チェアは必要ですか?
幼児期には必須ではないと考えています。子どもは長時間座り続けるよりも、動きのある活動と静かな活動を交互に行うほうが集中力を保てます。長時間座り続けることを前提とした高機能チェアよりも、自立的な活動をサポートするような仕様のキッズチェアの方が、この時期にはおすすめです。
モンテッソーリ教育の観点で理想的なチェアの条件は?
子どもが自分で動かせる軽量さ、足裏が床につく高さ、アームレスで出入りしやすいデザインです。自立を促し、子ども自身が環境を整える力を育てます。
アームレスチェアとアーム付きチェア、どちらを選ぶべきですか?
自立的に動ける年齢(およそ1歳半以降)ならアームレスがおすすめです。出入りがしやすく、チェアを運んだり配置換えしたりする活動にも参加できます。独立着座ができるようになる前のベビー期は、例外的にアーム付きが安心です。
ハイチェアはリビング学習に向いていますか?
あまり理想的ではありません。1〜2歳では自分で座るのが難しく、4〜5歳でも座りにくさが心理的ハードルになります。モンテッソーリ教育でも、「子どもサイズ」の家具を用意することが推奨されており、子どもが自分で扱える高さのチェアが良いでしょう。
チェアの素材や脚部デザインはどう選べばいいですか?
木製フレームは温かみがあり、他の家具やフローリングともマッチしやすいです。4本脚のデザインは安定感があり、脚の間から床が見えるため空間を広く感じさせます。